カイゼンの積み重ねは必ずしもよい結果を生まない!部分最適と全体最適を定量的に考える

2020年6月8日

こんにちは、ごんごんです。

今日は部分最適と全体最適というテーマを考えていきたいと思います。
具体例として少し数学を使いますが、結論として部分最適の積み重ねは必ずしも全体最適に直結しないということを伝えていきます。

部分最適と全体最適とは?

まず、部分最適と全体最適という言葉を簡単に説明します。
話があまり抽象的にならないように、ある会社を想定して書いていきまsう。

部分最適とは、個人や会社の一部門などがもっとも合理的と思われる行動を取ることを指します。
全体最適とは、会社全体として合理的な行動を取ることを指します。

会社で働いていると、よくわからない謎ルールがあって、「こうした方が絶対効率がいいのに」と思うことはあありませんか?
こうした考え方は部分最適の考え方です。
個人や部署単位で最適な行動や戦略を積み重ねると、「カイゼン」が積み重なって全体としても効率が上がる気がしますが、現実には必ずしもそうではありません。

例えば、会社としてデジタル化を志向していてペーパーレスや、ハンコレスを推進しているとしましょう。
最初はコストや手間がかかるでしょう。
そのコストを惜しんで、ある部署が「ハンコの方が決済が迅速にできる」と短期的な目線で部分最適を図ったとします。
これは会社全体の全体最適とは逆行しており、個別のベストと思われる行動(部分最適)が全体のパフォーマンスを下げることはよくあります。

逆に言うと、全体最適を進めると割を食ってしまう部分が出てくる可能性はあるということです。

数式で具体例を考えてみる

具体的に、部分最適の積み重ねが全体最適にならない例を1つ上げたいと思います。
次のような1辺の長さが1の正方形の頂点上にA~Dの4点があり、これらを最短の道路長でつなげるにはどうしたらよいでしょうか。
ただし、各点同士が必ずしも繋がる必要はなく、別の点を経由して移動できればよいことにします。

4点を最短経路でつなぐにはどうしたらよいか?
4点を最短経路でつなぐにはどうしたらよいか?

ここでまず部分最適を考えてみましょう。
例えばAとBの2点に注目した時に、2点の経路が最短になるのは直線になるときです。
つまり、部分最適は各点を直線でつないだ形になればいいことがわかります。
この場合、下の図のような回答が思い浮かぶのではないでしょうか。

部分最適を考えた最短経路
部分最適を考えた最短経路

案①はもっとも簡単な回答になります。
正方形に経路を作ると、1辺が1ですので経路の長さは4になります。

少し、頭を捻ってみると対角線上に経路を作ってみるというのもいいアイデアです。
この場合の案②では経路の長さは$2\sqrt{ 2 }$ = 2.83程度になり、案①よりも経路が短くなっているのがわかります。

部分最適の考え方では案①、案②が限界でしょう。
しかし、全体最適としてもっと短い経路が存在しているのです。

上の案③のような経路を考えます。
分岐までの距離を$x$とおくと、$x$は$0 \leqq x \leqq 1/2$で定義されます。
このとき、経路の長さLは、

$$ L = 1 - 2x + 2\sqrt{4x^2 + 1}$$

と表されます。

ちなみに$x = 0$のとき、アルファベットのHのような形になり、$L = 3$となります。
$x = 1/2$のときは、最初に説明した案②に一致し、L = $2\sqrt{ 2 }$になることが確認できます。
(検算は大事なので極力するようにしましょう)

このLに関して、$0 \leqq x \leqq 1/2$の範囲で最小値を求めていきます。
Lを$x$で微分したdL / dx は次のようになります。

$$frac{dL}{dx} = -2 + 8x/ sqrt{4x^2 + 1}$$

$\frac{dL}{dx} = 0$となる$x$を求めると、$x = \sqrt{3}/6$となります。
ここで増減表を書いてみると、$x = \sqrt{3}/6$で最小値を取ることがわかります。

Lの増減表
Lの増減表

この時のLの最小値は$ 1 + \sqrt{3}$、つまり2.73となります。
案②が2.83くらいでしたので、0.1ほど経路が短くなっています。

興味深いのは各点を直線でつなぐというのが部分最適でしたが、部分最適を積み重ねても今回の全体最適は見つけることができないということです。

仕事への教訓

仕事をしていると会社の命令や方針が非効率に思えることがあります。
よく会社の方針に背いて、自分は仕事ができると主張する人がいますが、上記のような例を考えるとその人は部分最適で動いているだけかもしれません。
マネージャーになると部分最適でなく、全体最適をどう達成するかを考えた采配が必要となります。
つまり、俯瞰的な観点で全体を見なければいけません。

一方で、全体最適の名のもとにしわ寄せが来ている(部分最適に移れない)部署や個人がいることも忘れてはいけません。
こうした方々には理念や経営方針を説くことでやりがいが向上するかもしれませんし、そのしわ寄せを踏まえて公正に評価する仕組みを作る必要がありそうですね。

まとめ

今回は、部分最適と全体最適の話をしました。
概要は以下です。

・部分最適の積み重ねを続けても、必ずしも全体最適になるとは限らない。
・仕事においては俯瞰的に全体最適を行うための視野が必要である。

ちなみに、最短経路の例は西成先生の本に詳しく書いてあります。
また、フーリエ変換や曲率の話まで非常にわかりやすく楽しく学べる本になっていますのでお手にとって見てください。

では、また次回!

雑記数学

Posted by gongon