送りバントはもはやオワコン?セイバーメトリクスの得点期待値から分析

2020年5月16日

こんにちは、ごんごんです。
今日はセイバーメトリクスの中で、何度か扱ってきた得点期待値の話の続きです。
野球の中でも、派手さはないものの欠かせない存在である送りバントの話をしたいと思います。

美徳とされる送りバントに統計のメスが入る

野球における送りバントと言えば、打者のホームラン、投手の奪三振などの華やかなものと対極で、地味なイメージが強いのではないでしょうか。
一方で、送りバントは「自己犠牲」、「縁の下の力持ち」、「いぶし銀」といった慎み深いと言われる日本人のメンタリティに馴染むようで美徳とされているような印象を持ちます。

私が小さい頃、巨人の川相選手が送りバントの犠打数で世界記録を更新し、長年チームを支えたそのプレースタイルに敵味方関係なく賛辞を送られていたと記憶しています。

また、今年は中止になりましたが、高校野球では送りバントを多用しています。
堅実に、そしてチームのために犠打を重ねるというのは、プロ野球にも増して感じるものが多いのではないでしょうか。

そんな野球には欠かせない存在の送りバントですが、近年発達しているセイバーメトリクスによると殆どの場合で有効ではないという結論に至っています。
統計手法の発達や、データの整備によって分析が進んだ結果、送りバントが激減してしまう可能性があるのです。

送りバントの得点期待値を考える

では、送りバントの有効性について得点期待値の観点から考えていきたいと思います。
得点期待値について、詳しくは下記の記事をご参照ください。

以後は、下の状況別得点期待値の表を用い、送りバントが成功すると仮定して前後で得点期待値がどう動くかを計算していきます。

無死一塁のケース:得点期待値は低下

送りバントがよく行われるケースは、無死一塁と思います。
トップバッターが出塁し、2番バッターが送りバントをする光景は数え切れないくらい見てきました。

さて、無死一塁の得点期待値は0.821ですが、送りバント成功の場合はどうなるのでしょうか。
成功するとほとんどの場合は一死二塁になりますので、0.687と得点期待値は低下します。

無死二塁のケース:得点期待値は低下

無死二塁の場合は、得点期待値が1.040です。
送りバントが成功の場合は一死三塁となりますので、0.919と得点期待値は低下します。

無死一二塁のケース:得点期待値は低下

無死一二塁の場合は、得点期待値が1.417です。
対して、送りバントが成功の場合は一死二三塁となりますので、1.335と得点期待値は低下します。

一死一塁のケース:得点期待値は低下

一死一塁の場合、得点期待値は0.499です。
送りバントが成功すると、二死二塁になり0.321と得点期待値は低下します。

一死二塁のケース:得点期待値は低下

一死二塁の場合は、得点期待値が0.687です。
送りバントが成功の場合は二死三塁となりますので、0.371と得点期待値は低下します。

一死一二塁のケース:得点期待値は低下

一死一二塁の場合、得点期待値は0.905です。
送りバントが成功すると、二死二三塁となり0.586と得点期待値は低下します。

小まとめ:送りバントの成功によって得点期待値は下がる

送りバントが成功するという前提で、送りバント前後で得点期待値の変化を見てみましたが、どの場面においても得点期待値が低下するという結果になりました。

こうなると、「送りバントはもういらないのではないか?」という声も聞こえてきそうです。
次で送りバントが有効と思われる場面を考えてみます。

送りバントが有効なケースを考える

ここでは、送りバントが有効なケースを考えてみます。

打者の打率が極端に低い場合

例えば、無死一塁で投手などの打率が極端に低い打者が打席に立つようなケースを想定してみましょう。
無死一塁の得点期待値は上で述べたように、0.821です。

プロ野球では一部を除き、投手に安打はあまり期待できないと考えても差し支えないでしょう。
三振した場合は一死一類となりますから、得点期待値は0.499と激減します。
ましてや、強硬策をしかけてダブルプレーになった場合などは目も当てられません。

このようなケースの場合、送りバントが有効です。
一死二塁の得点期待値は0.687と無死一塁に比べて低下はしますが、一死一塁やダブルプレーの場合に比べて得点期待値は高くなります

次が好打者である場合

例えば、一死一塁で次の打者が好打者である場合を考えましょう。
好打者の定義は難しいですが、イチローのように打率が高い、あるいは得点圏打率が高いでもいいでしょう。
もしくは、現在の打者よりもずいぶん打率が高いということでも大丈夫です。

現在打席に入っている打者がの打率があまり高くない場合、凡退して二死一塁で好打者に打順がめぐるケースが多いでしょう。
二死一塁から一気に得点をするには長打が必要であり、いくらイチローと言えど長打を放つ確率は3割もありません。

しかし、送りバントが成功している場合にはイチローに二死二塁で打順が回ります。
こうなると単打でも1点が入るため得点期待値は上がるでしょう。

1点だけ取れば十分な場合

同点で9回裏に来た場合、もしくは絶対的エースや鉄壁の中継ぎや守護神がいて1点とれば十分なケースは送りバントが重宝しそうです。

得点期待値とは平均得点なので、0点の確率、1点の確率、2点の確率・・・とすべての得点に、その確率を足し合わせたものになります。
一方で、似て非なる概念として「得点確率」というものがあります。
これは、その回に1点以上得点できる確率を表しています。

送りバントをすることで、得点期待値(平均得点)は下がりますが、得点確率(1点以上取る確率)が上昇する場面があります

例えば、無死一二塁のような場合で送りバントをすることで一死二三塁となり犠飛やスクイズ、パスボールなどでも1点を取ることができます。
このような場合は得点確率が上昇しています。

まとめ

送りバントをすると、得点期待値はほとんどの場面で減少してしまいます。
しかし、打率が極端に低い、次が好打者、1点で十分といった状況では、送りバントが有効な場合もあります

セイバーメトリクスの発展で送りバントは少し減るかもしれませんが、有効な場面もあるということがわかり、ホッとした方も多いと思います。
送りバントを是が非でも決めたい場面で、代打として登場し、何事もなく送りバントを決める川相選手はやはり偉大な選手で、チームへの貢献は計り知れないですね。

そんなことに思いを馳せながら、野球観戦をすると楽しみも増えることでしょう。

鳥越 規央 (著), データスタジアム野球事業部 (著)