研究会員会員が教える!アクチュアリー数学の対策と勉強方法
こんにちは、ごんごんです。
今回はアクチュアリーを目指している方向けに、一次試験の数学対策について説明します。
私は数学については大学受験(理系)以来、ほとんど勉強していませんでしたが、半年ほどの勉強で一発合格しました。
数学の試験概要について説明した後で、私がやった勉強方法についても具体的に触れたいと思います。
一次試験について
アクチュアリー試験は一次試験、二次試験ともに12月の中旬に年一回のみ行われます。
一次試験は、以下の5科目があります。
・生保数理
・損保数理
・年金数理
・会計・経済・投資理論(KKT)
これらの科目は一度に全部取りきる必要がなく、一つずつの受験でも大丈夫です。
基本的には5科目一気に受かる人はほとんどいないでしょうから、毎年1~2科目ずつ受験して合格を積み重ねていくのが大事です。
もし5科目を1年で取得したら業界でもかなり有名になれると思います。
(→2020年度は少なくとも1人いました。)
ちなみに、一次試験はどれも制限時間3時間、合格ラインは基本的に6割以上です。
アクチュアリーの説明については、下記の記事を読んでみてください。
一次試験の受験順番については、一般には下記のように言われています。
・数学→損保数理
・生保数理→年金数理
・会計・経済・投資理論の受験はいつでもOK
私もこの順番での受験に賛成です。
数学は得意な人と苦手な人の差が大きく、数学が合格できなければ他の数理科目で苦労すると思います。
また、損保数理は数学の知識を前提にしている単元が多々あるので、数学の知識がない人は厳しいでしょう。
数学について
ここではアクチュアリー会が公表している資格試験要領などをもとに、合格率・試験範囲・指定教科書について説明します。
2019年の時点での情報を書いているので、2020年以降受験の方は必ず今後発表される資格試験要領をご自身で確認ください。
合格率
数学の合格率を2001年~2019年の19年間で見ると、平均は18.7%です。
まれに合格率40%超という易化する年もありますが、ここ近年は10~20%あたりの合格率が続いています。
アクチュアリー試験は会社から受験・合格を課せられている社会人が多いです。
そうした勉強をしっかりしてきた人が受験しているにもかかわらず、合格率は決して高くはありません。

試験範囲
日本アクチュアリー会の2019年の資格試験要領によると数学の出題範囲は、「確率」、「統計」、「モデリング」の大きく3分野です。
・確率変数、確率分布、確率密度関数、分布関数
・確率変数の平均値、分散
・変数変換と和の分布
・積率と積率母関数、確率母関数、特性関数
・大数の法則と中心極限定理
・統計的推定、区間推定
・統計的検定
・標本分布論と標本調査
・最小2乗法と相関係数と回帰係数の推定、検定
・時系列解析
・確率過程
・シミュレーション
アクチュアリー会指定の教科書
資格試験要領では、教科書も指定されています。
使い方やオススメの問題集については後述の「実体験を踏まえた勉強方法」で説明しますね。
確率分野の指定教科書と指定問題集
確率分野の参考書は下記の「入門数理統計学」です。
確率分野の指定問題集は「確率統計演習1 確率」です。
統計分野の指定教科書と指定問題集
統計の指定教科書は「統計学入門(基礎統計学Ⅰ)」です。
統計の指定問題集は「確率統計演習2 統計」 です。
モデリング分野の指定教科書と指定問題集
モデリング分野の指定教科書はアクチュアリー会が出版している「モデリング」です。
また、指定参考書も同じくアクチュアリー会の「確率・統計・モデリング問題集」です。
この二冊はAmazonや楽天では売っていないため、アクチュアリー会のHP(リンク)から購入ください。
実体験を踏まえた勉強方法
ここでは、私が半年で受かった勉強方法や使った参考書について説明します。
まず買うべき参考書と問題集を3冊厳選
上記で紹介したアクチュアリー会指定の参考書と問題集ですが、基本的にはほとんど使っていません。
かろうじて使ったのは統計指定教科書の「統計学入門(基礎統計学Ⅰ)」と、「モデリング」くらいです。
なぜこれらの指定教科書を使わないのかというと、難しい、堅苦しいからです。
アクチュアリー会が指定しているだけあって、厳密であり、しっかりしたものであるのですが、初学者にはいかんせんイメージがつかみづらいと感じるはずです。
合格した今ならなるほどと思って読めますが、数学に自信がない人にはハードルが高いでしょう。
ただし、大問は指定教科書からそのまま出ることも多いので、ある程度の実力がついた後に時間に余裕があれば読んでおくといいでしょう。
上記を踏まえて、数学を受験するにあたって必須ともいえる参考書・問題集を3冊紹介します。
①アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 数学
アクチュアリー受験界隈では有名な「アクチュアリー受験研究会」のMahさんが執筆された本です。
タイトルの通り、アクチュアリー試験の合格を目的にして書かれた本ですので、合格に直結します。
アクチュアリー試験や、数学についてのガイダンスに始まり、基本公式集や典型問題までオールインワンです。
私が数学を受験・合格した年に販売されましたが、周りの受験生の多くが試験当日に持ってきていました。
この本に書いてあることは全ての受験生がマスターしていると考え、周りと差がつかないようにまずはこの本を買いましょう。
②弱点克服 大学生の確率・統計
こちらも有名な本です。
見開きで1テーマを扱っており、まず例題を解き、そのあとに練習問題に取り組めるようになっています。
①で紹介した「アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 数学」は非常によくできた参考書ですが、練習問題が少ないため、典型問題を解く練習を重ねる場合にはこの本がいいでしょう。
私は特に確率分野の理解を深めるためにこの本をよく参照し、できない問題に何度もトライしました。
なお、モデリングなどにもふれていますが、試験範囲をカバーするには不安なのでこちらもモデリングの指定教科書を買いましょう。
③明解演習 数理統計
これも有名どころです。
使い方は②と同様で、例題と練習問題があるため、典型問題の練習に利用します。
タイトルの通り、統計に重点を置いた本ですので、統計分野の推定や検定の問題の演習に非常に有用です。
個人的にいいなと思ったのが、例題が具体的な点で、「こんな風に統計を使うのか!」と楽しみながら勉強を進められた記憶があります。
統計分野は非常に演習量がものを言いますので、多くの問題を浴びるためにこの本を使いましょう。
(おまけ)初学者用の本を2冊紹介
統計の勉強を全くしたことがない方は、おそらく公式テキストや上で紹介したテキストでもチンプンカンプンだと思います。
そんな方は、一旦全体像をつかむためにもこういった本を読んでみてください。
おまけ①:今日から使える統計解析 普及版 理論の基礎と実用の”勘どころ”
非常に分かりやすく軽快な話口調で統計の基礎を説明してくれる本です。
下記に感想などを書いていますのでご参考までに。
おまけ②:統計学が最強の学問である
統計学がなぜ最強の学問なのかというタイトルの通りに、あらゆる分野で統計が使われている理由を圧倒的な説得力で説明してくれます。
数学や統計を学習するモチベーションを上げてくれるとともに、「広義の回帰分析」や「頻度論やベイズ論の違い」といった初心者がつまづきそうな項目の理解も深まります。
アク研に登録してワークブックで演習を行う
アク研(アクチュアリー受験研究会)というアクチュアリー志望者が集まるサイトがあり、そこでワークブックという各科の単元別問題集が無料で公開されています。
アク研については下記で説明しています。
数学もワークブックが公開されているので苦手分野を中心に演習を繰り返すと非常に効率が良いと思います。
実践的な解法も紹介されているので、力がつくと思います。
本番までの勉強時間イメージ
私はアクチュアリー受験を決めたのがGWが終わってしばらくした頃であったと記憶していますので、勉強時間は半年程度でした。
秋頃までは会社の昼休みや、業務後を利用して1日1時間~1時間半程度、11月頃からは平日3時間、休日は6~8時間程度勉強したと思います。
勉強できない日も多くあったので合計で試験まで200時間程度でしょうか。
大学受験では東大の理科Ⅱ類を受験したため、数学のⅢCまでは非常に自信があったのですが、大学では数学から遠ざかり、統計もほとんどわからない状態からスタートしました。
統計や確率分布を扱っている人は100~150時間程度で合格までたどり着けるのではないでしょうか。
当時は「①ストラテジー」が発売されたばかりで存在を知らなかったこともあり、最初に始めたのは「②弱点克服」でした。
確率分布とはなんぞやから始まって、正規分布は名前こそ知っているけど扱い方がわからない状態でした。
少しずつ例題を解いて、練習問題で理解を深めてというのを繰り返し、「②弱点克服」が終わったころにはもう9月~10月だったのではないかと思います。
大まかな基本は身についたので2~3週間で「③明解演習」の統計分野を重点的に解きまくり、11月から過去問に入りました。
過去問を解いたのはおよそ15年程度です。
欲を言えば20年分くらいやっておきたかったのですが、解きなおしに時間がかかったため、15年分が精一杯でした。
過去問を解いて、よくわからなかったところを①~③の参考書を見て納得し、類題もついでに解いてを繰り返していました。
私が上記のアク研の存在を知ったのは試験後だったため、ワークブックは利用していません。
ワークブックがあれば、不安な分野の演習を重ねることができるので併用して勉強するとなお良いと思います。
試験の時間配分や大問の扱い
試験が180分であることは冒頭で執筆しました。
数学では例年小問が12問、大問が2問出ます。
小問の内訳
小問の配点は60点で、1問5点です。
分野ごとに分けると下記のようになります。
・統計分野4~5問(20点or25点)
・モデリング分野3~4問(15点or20点)
大問の内訳
大問の配点は20点×2問=40点です。
分野ごとでは以下のようになります。
・統計分野1問(20点)
過去問を解きながら目指すライン
合格点は60点です。
大問は難易度に差があるため、大問であまり高望みをしないよう過去問を解くようにしましょう。
ちなみに私の年には、まったく対策をしていなかった二次元正規分布が出て大問1つがほとんどできませんでした。
私が目安にしていたのは、小問で10問正解(50点)+大問で1問完答と部分点で80点です。
また、時間は小問を1問8分、大問を20分を想定してしました。
この時間配分であれば、小問が96分、大問40分で、見直しに40分以上を充てることができます。
たまにモデリングを捨てる人がいますが、15~20点を最初から失ってしまうため、確率・統計でのミスが許されません。
モデリングの範囲は限られているうえに、慣れれば難易度も高くないためおろそかにしてはいけません。
個人的には統計分野は計算こそめんどくさいですが、点は取りやすいと思います。
各統計量の暗記と計算手順をしっかり対策しておけばほとんど落とすことがなく、精神的におちついて試験に臨めると思います。
大問について
大問については難易度があまり定まっていない印象です。
たいてい大問の前半は誘導が丁寧なので素直に解いていけば半分くらいは埋まるのではないでしょうか。(配点は半分もないですが)
完答できなくてもそこそこ点数をかき集める必要があります。
対策については過去の大問を解いてみることに加え、指定教科書にも余裕があれば手を伸ばしましょう。
大問特有の証明問題などは教科書や演習書にそのまま掲載されていることも多いです。
精密法などは形を変えて出題され続けているのでマスターしていれば完答の20点が期待できかなり美味しいと思います。
ガンマ関数、ベータ関数はマスター必須
ガンマ関数とベータ関数は自由に使いこなす必要があります。
これらの関数の積分計算はよく見かけるので、変な計算ミスをしないためにも形を覚えてください。
アクチュアリー会の過去問模範解答などはあまり積極的に使っていませんが、大幅に時間を短縮可能です。
ガンマ関数やベータ関数がよくわからない人は「①ストラテジー」などで解説があるので参照してみてください。
ちなみにこれらの知識は損保数理でも使います。
まとめ
アクチュアリー数学は例年合格率が10~20%の難関試験です。
数学ができないとその後の損保数理などでつまづくため、最初の方での取得をオススメします。
私は半年で200時間程度勉強をして合格しましたが、統計や確率を大学などで扱った人はもう少し短い時間で可能でしょう。
アクチュアリー会の指定教科書も一部使いますが、ここで挙げた参考書を有効活用するのが効率的だと思います
これらの参考書を終わらせて、過去問を20年程度やれば合格はかなり近づくでしょう。
始めるのは早いほどいいので、すこしずつでも始めてみましょう。
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